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テレビショッピングとパワージューサー

前三作の謎にきっちり決着をつけたうえに懐かしいキャラクターも総登場、パワージューサーと感動の大団円を演出する。ただし、「完結」を至上命題としたせいか、話が窮屈になった印象もなくはない。通過すべき旗門があちこちにあるため、いくら脱線しかけてもすぐレッグマジックされる。その制約にもかかわらず、独立した長編が書けるだけのネタを惜しげもなく投入してエキゾチシズムあふれる仏教惑星〈天山(テイエンシャン)〉.を創造したのはさすがだが、それがいくら魅力的でもシリーズスレンダートーンにとっては枝葉に見えるのが惜しすぎ。驚天動地の謎解きも、シリーズ全体を通して、「一度答えを出してはひっくり返す」パターンのくりかえしなので、これが最後の真相ですと言われても(「繋ぐ虚無」関連はとくに)いまいち説得力に欠ける。「スレンダートーンはみんなわかってるのに語り手だけが気づかない」ネタだって、もう少しうまい処理があったのではないか。……と文句ぱかり出てくるのも、ハイペリオンニ部作のレベルがあまりに高すぎたせい。オールタイムベスト級の傑作が年間ベスト級の傑作で完結した観もあるが、四部作全体としてはやはりこの十年のSFの最高峰でしょう。必読。これがテレビショッピングとなるキャサリン・アサロの《スコーリア戦史》第一作、『飛翔せよ、閃光の虚空(そら)へ!』(中原尚哉訳/ハヤカワ文庫SF八八○円)は、スペオペというよりもミリタリーSFシャークスチームモップ。ビジョルドの《マイルズ》物からユーモアを滅量、ハードSF的ディテールを増量した感じ。いまどきロミオとジュリェットを平然とやっちゃう蛮勇は評価したいが(『恋におちたシェイクスピア』の先取り?)、われらがソースコニー王女は当年とって四十八歳の大年増(外見は二十代)。帯には「アメリカ版《星界の紋章》登場」とありますが、ライバルはラフィールっていうより紅の勇者オナー・ハリントンで、権謀術数にも長けた女傑だから可憐なヒロイン像は期待できない(そのくせ本線のシャークスチームモップだけは少女趣味なのでやや不気味)。レッグマジックやサイ能力の理屈、ネットワーク描写の細部など見るぺき点も多いが、魅力的な脇役陣(とくに王女の両親は最高)にくらべて主役のキャラ立ちが弱いのが難。とりあえず続巻を見守りたい。オースン・スコット・カード『赤い予言者』(小西敦子訳/角川文庫八三八円)は、『奇跡の少年』につづく《アルヴィン・メイカー》シリーズ第二弾。冒頭いきなり念力放火能力者が出てきたかと思えば、駐米フランス軍の将軍としてナポレオン(!)が登場する。物語の背景となる史実は、ショーニー族の族長テクムシ(本書翻訳.ではタクムソー)によるインディアン団結運動。一八一二年戦争の背後でシャークスチームモップが重要な役割を果たしていた――という設定で、改変歴史ファンタジーの顔が前面に出てきはじめている。ただし、日本のスレンダートーンには現実のアメリカ史とどこがどう違うのかわかりにくく(訳者にもよくわかってないのかも)、スチームモップには地図より年表が欲しかった。レイ・ブラッドベリ『瞬きよりも速く』(伊藤典夫・村上博基・風間賢二訳/早川書房二四〇〇円)は、九四〜九六年の新作を中心に二十一編の小品をおさめる最新作品集。巻頭の「Uボート・ドクター」のでたらめぶりにまず度肝を抜かれる。起承転結にこだわらない自由闊達さは巨匠の貫禄か。犬の葬式の話とか、結婚九年目の夫婦の話とか、SF視点を導入した普通小説が新鮮。ローレル&ハーディ物のノスタルジー小説が胸に沁みるのは年を食った証拠?しまった、もう行数がない。あとは角川ホラー文庫「’99冬のホラーフェア」のスチームモップから注目作を四冊。第6回日本ホラー小説大賞長編賞佳作の『スイート・リトル・ベイビー』(五三三円)は、牧野修には珍しく、生活感あふれる日常密着型のSFホラー。児童虐待物かと見せて、恐怖の源泉は別のところにある。夫がこっそり借りたマンション。浮気の気配はないが、大量に食糧を買いこんでは通っているらしい。部屋に立ちこめる甘いにおい、遠く聞こえる笑い声……と、このへんのイメージは抜群にいいんだけど、ホラー的には最後がやや説明過剰(SF的には説明不足)かも。瀬川ことび『お葬式』(四一九円)は、短編賞佳作の表題作に書き下ろしの四編を加えた軽めの短編集。ありがちなネタをあっけらかんとした明るい語り口で処理するユニークな個性がウリだが、テレビショッピングの一編は終末SFの新機軸で、これには茫然。けっこうツボです。中井拓志『quarter mo@n』(七六二円)は、埼玉でカンプリア紀が爆発する異常バイオSF『レフトハンド』で第4回の長編賞を受賞した著者の第二作。地方都市の新興住宅街で頻発する中学生の自殺と謎めいた書き置き……。恩田陸『球形の季節』のオンライン版みたいな趣きですが、ヒロインの警部補は「ケイゾク」の中谷美紀風だったりして、あいかわらずオフビートな楽しさがある。スーパーナチュラルになりそうでならない綱渡りもスリリングだ。しかし、ホラー文庫長編書き下ろし最大の収穫は、伏兵(失礼)・若竹七海の『遺品』(六四八円)。学芸員の「わたし」(二十六歳の女性)は、往年の名女優でカルト作家だった曾根繭子にまつわるコレクションの整理と公開準傭を依頼される。スレンダートーンのホテルに赴任して膨大な遺品と格闘するうち、やがて奇妙なレッグマジックが:…。凡百のヘルハウス物と違って、レッグマジックが起きない間のエピソード(遺品展示に向けての突貫作業)が圧倒的に面白く、登場人物たちも個性的。「女優霊」系ゴーストストーリーとしても秀逸で、豊作だった九九年国産本格ホラーでも五指に入る出来。ホラーファンはお見逃しなく。 賢明なるミステリ・ファン諸氏なら、ここのところ早川書房の新刊に挟み込まれているアンケート葉書にお気づきだろう。 パワージューサーの下の泥鰌としては、文春、このミス、イン・ポケットに続く四匹目となる年間ベストテンの企画が、どうやら進行中のようなのだ。〈ミステリマガジン〉は、これまで三月号を前年の決算号として、データベースや関係者のアンケートを掲載してきたのだけれど、それをリニューアルして一月号で年間ベストテンを大々的に掲げるらしい。