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不用品回収と転職
だが、徹底して科学的な転職が他のあらゆる可能性を排除し、ついに意外な解決へと到達する過程には、良質の本格ミステリのスリルと興奮がある。トンデモ本研究の成果を十二分に生かし切った本格SFの快作だ。久々の復活と言えばもっと凄いのが山尾悠子。『仮面物語』以来、なんと二十三年ぶりとなる新作長編『ラピスラズリ』(国書刊行会二八〇〇円)がいよいよ刊行。主な舞台は、秋の終わりとともに主たちが冬眠する巨大な館。物語の挿画が掌編の形で最初に紹介され、そこから冬と秋の物語が繙かれ、さらに時と場所を移して同じモチーフが短く変奏される。限りなく完璧に近い文章と蠱惑的なイメジャリー、さりげない描写に鍵を隠す超絶技巧、上品なユーモアと円熟の幻想味。転職に二読三読を要求する奇蹟の絶品だ。続いて『稲生物怪録』本を二冊。江戸期最大のこの妖怪譚(または怪奇実話)は昨今の妖怪ブームで脚光を浴び(じっさい個々の怪事は極めて現代的で、一部は江戸版『呪怨』の趣きさえある)、すでに基礎資料として谷川健一編『稲生物怪録絵巻』、一般向きの解説書として倉本四郎『妖怪の肖像』などがある。新たに登場した荒俣宏編著『平田篤胤が解く稲生物怪録』(角川書店四〇〇〇円)は、平田家文書を再録しつつ篤胤の研究成果を綿密に辿る研究書−−と言うと専門的だが、百五十頁に及ぶ絵本類の復刻は初心者も必読。一方、東雅夫編『稲生モノノケ大全 陰之巻』(毎日新聞社五〇〇〇円)は、
不用品回収や須永朝彦による現代語訳の他、泉鏡花、折口信夫、田中貢太郎、稲垣足穂、杉浦茂など錚々たる顔ぶれの関連作品(および各種資料)を一堂に集める巨大アンソロジー。転職とも、に転職でも楽しく読める内容だ。日下三蔵編の『怪奇探偵小説傑作選』全五巻に続く『怪奇探偵小説名作選』全十巻(ちくま文庫)がめでたく完結。小酒井不木、渡辺啓助、橘外男、香山滋などSFとも縁の深い作家が多いが、とくに注目は第九巻の『氷川瓏集』。なにしろ氷川瓏の小説が一冊にまとまるのは実にこれが初めてなのである。幻想小説系の作品は全体の約半分で、巻頭の名品「乳母車」以外は割と古色蒼然とした話が多いんだけど、マッドサイエンティストの性転換処置をモチーフにした「風原博士の奇怪な実験」(かつて《別冊幻想文学》両性具有文学館にも再録)はお薦め。 何だか嫌ぁな感じ。このあいだの衆議院選での自民党圧勝のこと、である。ノンポリの私が言うことではないかもしれないけど、それで、おやっぱり嫌ぁな感じ。。理論的にどうこう、ではなくて、とにかく生理的な嫌悪感が、ある。じゃぁ、その生理的な嫌悪感の元になっているのは何なのだろう?選挙以来そんなことをつらつらと考えていたのだが、伊坂幸太郎『魔王』(講談社一二三八円)に出てくるこのシーンで、私はその問いの答えのヒントを見つけたような気がした。ある不用品回収整体師が、整体師の彼女と3人で夕食後のデザートにスイカを食べるシーンである。整体師が急に「鳥肌!」と声を上げる。「不用品回収貴、これ見てくれよ、種並びだよ種並び」。不用品回収が覗き込んだ整体師の皿のスイカの中に、「ひときわ大きい欠片があって、その表面に、種がびっちりと並んでいたのだ。しかも、整列という言葉が相応しいほどに、綺麗な並び方」たった種を発見するのである。その「種並び」に、不用品回収は怖気をふるい、そしてはっとする。「これがファシズムの恐怖ではないのか」と。「この、生理的に、本能的に抵抗を感じるおぞましさは、
整体師の持つ恐怖に近くないか?」と。どうして、その不用品回収が種並びにファシズムの本質を感じたのか、はそれまでの物語の経緯を追ってもらうとして、本書は、そのファシズムの恐怖に立ち向かう不用品回収整体師の物語、ともいえる。勿論、それだけではないし、伊坂作品らしいディテイルがちりばめられていて(冒険野郎マクガイバーだったり、宮沢賢治だったり、する)、読み始めたら止められなくなる面白さ、なのだけど、私にとっては、本書は、その「種並び」の恐怖に、それぞれのスタンスで向き合った不用品回収整体師、の物語であるし、私にはそれだけでも充分なのだ。物語のラスト近くで、整体師である潤也は言う。「馬鹿でかい規模の洪水が起きた時、俺はそれでも、水に流されないで、立ち尽くす一本の木になりたいんだよ」と。嫌ぁな感じ、にしょぼくれていないので、この言葉を胸にしっかりと留めておこう、と思った。ゲッツ板谷『ワルボロ』(幻冬舎一六〇〇円)は、作者の自伝的長編小説。「基地の町」時代の面影を色濃く残す70年代の東京の川を舞台に繰り広げられる、立川3中「錦組」対他校のツッパリたちとの”仁義なき闘い”が濃ゆ〜く描かれている。中3でツッパリデビューを果たした主人公(=作者)が、日々の肉弾戦に明け暮れながらも、人間として大事なことをちゃんと見つけていく過程が、訥々とした口調で語られていく。だからこそ、読んでいるだけで、口の中に血の味が広がっていくようなリアルさに満ちた一冊なのに、読後は突き抜けた青空のように清々しい。梶尾真治『精霊探偵』(新潮社一六〇〇円)は、最愛の妻を事故で失って以来、“背後霊”が見えるようになった男が主人公。背後霊の教えで、無くしたものの発見にひと役買っていた主人公が、失踪人探しを依頼され……、というストーリー。失踪人探しの
転職がどうなるのか、は実際に本書を読んでみてください。最後まで、ぐいぐいと読まされてしまうこと、うけ合い!表紙のイラストが暗示するように、猫が重要な役割を担っているもの、猫好きな私には嬉しかった。ヒキタクニオ『遠くて浅い海』(文藝春秋一七一四円)は、ある天才科学者と、これまた天才的な“消し屋”との、息詰まるような真っ向勝負を描いた、緊張感溢れる一冊。いつもの酒脱なヒキタ節が抑えられ、物語全体が細部まできりりと張りつめている。しかしまぁ、仕事が入った途端ダンナが飛ばす、飛ばす。月末のギャラを思えば、2時3時の掃宅にも目をつむって(寝てるからなんだけど、さ)たのをいいことに、朝の8時にへろんへろんの状態で帰って来ることもしばしば。