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FX
史上最後のハヤカワSFコンテスト(第18回/92年)で佳作入選しながらSFマガジンに載らなかった幻のデビュー作「ミューズの額縁」は、アキヤマ版≪博物館惑星≫の趣き。コンテストの選評で指摘された欠陥は修整されていないものの、オーソドックスな大ネタとそこから導かれる光景の美しさは今も貴重。唯一の新作「光響祭」はその姉妹編的な性格で、やはりエキゾチシズムあふれるイメジャリーがすばらしい(アキヤマ未来史の重要キャラも登場する)。表題作と「まじりけのない光」の二本は(どちらも94年廃刊の故≪ グリフォン≫誌初出)気恥ずかしくなるほどストレートなボーイミーツガールのロマンティックSF。こういう話を照れずに書けてしまうのが秋山完の才能だろう。近作の長編だと、なくもがなのおやじギャグでそれを台無しにする傾向が強いんだけど、短編ではギリギリ許容範囲の地口程度。著者のノスタルジックな SF世界に触れるには最適のFX 取引だろう。以下ホラー文庫の新刊を駆け足で。FX 取引『あなたの待つ場所』(角川ホラー文庫七〇五円)は『パワー・オフ』系の人工生命SF長編。新味に欠けるが可読性は高く、ウイルスパニック物の水準は一応クリア。五年前に出てればもっとよかった。
FXことび『夏合宿』(同・四九五円)は著者三冊目の短編集。独特のユーモア感覚全開の「本と旅する彼女」がユニーク。小説でこんなオチが書ける人はなかなかいません。残る三冊はハルキ・ホラー文庫から。バカホラー『言霊』が話題を巣めた中原文夫の新作『霊厳村』(六〇〇円)は、昭和三十年代そのままの村に迷い込む定番の設定だが(夢見専門の一家を除き、村人は誰も夢を見ない)、村の日常描写が徹底してオフビート。人を蔑んで睨む視腺を競う大会とか、よくもまあ次々へんなことを考えるものである。『怪(あやし)の標本』(五六〇円)は、『幻日』(ブロンズ新社)で
FX 取引から高く評価された福澤徹三の第二作品巣。表題作は怪奇実話っぽいエピソードの聞き書きという趣向。インパクトでは『幻日』に一歩譲るが、やはり水準は高い。秋里光彦(高原英理の別名義)『闇の司』(五二〇円)は、「女殺油地獄」と「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」を下敷きに、欧米流サイコサスペンスをホラージャパネスク化する和魂洋才の試み。完成された様式美の世界だが、撮影所の猟奇殺人から異界への転換が唐突で、やや分裂した印象なのが惜しい。最後に文庫以外のSFを一冊。谷甲州&水樹和佳子の『果てなき蒼氓』(早川書房一八〇〇円)は、光瀬龍&萩尾望都の『宇宙叙事詩』を思わせるイラストストーリー。風景のSFを志向する物語に挿画がキャラクターを補完し、前野昌弘の科学解説がそれをハードSFとしてまとめあげる。三位一体のバランスが絶妙だ。映画『A.I.』のご威光で竹書房から突然邦訳が出たオールディスの最新短編集は次号で。いや、それにしても長かった。足かけ十三年≪小説新潮≫に連載された酒見賢一の大作『陋巷に在り』が、第13巻の『魯の巻』(新潮社二〇〇〇円)でついに完結。この壮挙に敬意を表して、1巻から13巻まで一気にまとめ読みしたんですが、これがもうとんでもなく面白い。 FX 取引は春秋時代(紀元前5世紀初頭) の魯。主役は孔子の最愛の弟子・顔回子淵(前514〜前483)。「一を聞いて十を知る」天才でありながら政治の表FX 取引に立たず、陋巷の貧乏暮らしを選んだ男。その顔回の生涯をめぐる雄大な歴史小説_と思ったら大間違いで、これは古代中国の物凄い超能力者たちが鎬を削る、FX 取引ばりの一大伝奇サイキックスーパーアクション巨編なのである。もちろん出来事自体は史実に基づいているし、『史記』『左伝』『論語』などが縦横無尽に引用され、歴史的な蘊蓄もたっぷり。しかし、
FXではわずか一行の謎めいた記述が単行本一巻にふくらんでしまうほど想像力が暴走し、13巻を費やしても歴史上の時聞はほんの数年しか進まない(だから、長大な歴史絵巻的「物語」を期待する人には不向きかも)。そのかわり、顔回に救われたのが縁で拝しかけ女房(?)となるラブリーな天然少女・z、(よ)や、数十人の兵士を一瞬にして殺戮する最強のファムファタル・子蓉など、強烈な魅力を備えたキャラが多数登場、八面六臂の活躍を見せる。「儒」や「礼」にまつわる超自然的秘術にはある程度科学的・合理的な解釈が加えられているが、呪術的な世界観が現実に力を有していた時代として描かれるため、物語は軽々と冥界や異界を往還し、饕餮(とうてつ)をはじめとする奇怪な神様たちも平然と顕現する。大ざっぱに言うと、陽虎の反乱〜孔子一門VS 少正卯(しょうせいぼう)一党の戦い三都毀壊作戦(孔子VS公山不狃(こうざんふちゅう)/孔子VS公斂處父(こうれんしょほ))と続くのが全体の流れだが、小説の進行は歴史的時間経過と比例しない。子蓉の媚術に冒されたz、を救うため南方の名医に診せる病気治療話がえんえん四巻も続き、それが時空を越えた一大スペクタクルに発展しちゃうんだからすさまじい。諸星大二郎ファンや中国歴史小説読者はとっくに読んでるでしょうが、伝奇小説ファンも必読。12の有力諸侯が割拠した春秋時代の中国社会は≪十二国記≫背景設定の源流みたいなところもあり、小野不由美ファンにもお薦め。7巻まではもう文庫になってるから、とりあえずそちらからどうぞ。ところで、つい最近、山東省出身の人と話していて驚いたんだけど、彼の地では今も子供の呼び名に魯の字をつけることが多いのだとか。二千二百年前に滅んだ国の名前がまだ現役って……。中国四千志夫の歴史恐るべし。その勢いでさらに七百年ばかり歴史を下り、第二回小松左京賞受賞作家・町井登志夫の『諸葛孔明対卑弥呼』(ハルキ・ノベルス九九〇円)。秘書東夷伝に倭人伝があるなら、曹操が卑弥呼をスカウトしても不思議はないという発想(推定)。