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不動産と賃貸
赤壁の戦いで幕を開けた物語は日本に移り、邪馬台国の勢力拡大過程が語られる。当時の倭国は朝鮮半島や中国大陸出身の移民が各地に住み着いてシマをつくり、それぞれ自国の言葉でしゃべるアジアンノワールな世界だった――と、この発想は秀逸だが、孔明VS卑弥呼の対決という大ネタがそれといまいち噛み合わず、小説の商店が分裂した感じ。とはいえ、べらんめえ口調でしゃべる型破りな孔明像や、呪術的な作戦に化学のメスを入れて解説する趣向は読み応え十分なので、SF読者も三国志愛好者もお見逃しなく。 一方、本格SF方面で今月最大の収穫は、新城カズマ『星の、バベル』(ハルキ文庫上六九〇円下七六〇円)。カバー見て南海奇皇(ネオランガ)みたいな話かなと思ってたんですが、読んでびっくり。これは小松左京〜山田正紀の系譜につながる直球の文系日本SF。ミクロネシアの架空の独立国で滅亡危惧言語を研究する日本人が主人公。ポリティカルサスペンス風の賃貸を下敷きにしつつ、すばらしく
不動産な外為が語られる。脳に感染して土台から書き換えてしまうシステムとか、あらゆる状況を一語で表現できるため一切の文法を必要としない言語とか、ネタだけなら年間ベストワン級。惜しむらくは、カテゴリーの違う物語要素を大量に投入しすぎてネタの切れ味を弱めていること。ごった煮の魅力があるとはいえ、SF的にはもったいない。 岩本隆雄『鵺姫(ぬえひめ)異聞』(ソノラマ文庫六〇〇円)1/2は星虫シリーズの新作。時代小説部分は『鵺姫真話』以上に賃貸が奇薄で、かなり苦しい。独立した挿話としてもっとこぢんまりまとめたほうがよかったかも。 徳間デュアル文庫から3冊。上遠野浩平『あなたは虚人と星に舞う』(五九〇円)はナイトウォッチ三部作完結編(?)にふさわしい秀作。虚空牙の扱いには多少疑問があったんだけど、まさかあそこで『ガメラ3』になろうとは(違います)。幕切れはほぼ完璧。 倉阪鬼一郎『内宇宙への旅』(五〇五円)1/2はディック的なテーマをホラーに仕立てた秀作。「思いっきりバカなネタを異様な緊迫感で包みシリアスに仕上げる」というM・ナイト・シャマランの方法論は小説に応用できないかとぼんやり思ってたんだけど、『サイン』にハマったひとはぜひ。小林めぐみ『宇宙生命図鑑』(五三三円)1/2は、70年代風の異星人類学SF。ネタはきっちり用意してあるが、ジュブナイル的なお約束がどうもそれとミスマッチで、おさまりが良くない印象。 今月最後の一冊は、川端裕人の『竜とわれらの時代』(徳間書房二〇〇〇円)。恐竜とアメリカを
外為にしたSF――というよりこれは正しい意味での「化学小説」か。幕張で≪世界最大の恐竜博≫を見てセイモサウルスの復元骨格のに驚嘆した人なら絶対に買い。どうせならこれを読んでから≪恐竜博≫を見たかったなあ。発見と発掘の原初的な喜びに満ちた恐竜小説。クリスチャンサイエンスの扱いはユニークだし、土着的な竜神信仰もうまく物語とからんで、奥行きが出ている。その一方、サスペンス仕立ての部分は(それがないとエンターテイメントとして成立しにくいにせよ)むしろ夾雑物に見えた。恐竜仮説対決をメインに据えて、純粋に、「科学の小説」として書く手もあったのでは。この文章が読まれる頃は、夏真っ盛りで、六月ひと月を席巻したあの空気は、雲散霧消しているかもしれない。だが、今現在は、まだ何となく余韻が残っていて、美味しいケーキの最後のクリームをなめるように、外為の残り香を楽しんでいる。不思議なものだ。サッカーなんてまるで興味がなく、日本戦くらいしか見ないだろう、と思っていたのに、にわか
賃貸になるとは思わなかった。にわかのままでは終わりたくないので、遅ればせながら関係本を読み始めている。四年後はバッチリだ。試合もさることながら、参加国の不動産や感性をこれほど生に感じたこともなかったように思う。ロバート・レヴィーン『あなたはどれだけ待てますか せっかち文化とのんびり文化の徹底比較』(忠平美幸訳/草思社一八〇〇円)を読みながら、中津江村のことを思っていた。カメルーン代表に翻弄されながら、一生懸命もてなそうとする人々の姿は、古きよき日本人の姿であった。ちっとも悪びれないカメルーン選手たちも愛嬌があった。この本の著者はアメリカの心理学者で、元々「時間」に興味があった、という。ブラジルヘ客員教授として招かれたときのこと。恐るべき「のんびり文化」の洗礼を受けた。外国へ行って誰もが味わうカルチャーショックを、彼はそのまま研究テーマにしたのだ。時間の経過を表す言葉として「時計時間」と「出来事時間」に分け、「待つ」という行動を考察する。何より圧巻なのは、留学生達を使って調査をした各国せっかち度ランキングだ。日本人がぶっちぎりの一位かと思いきや、上には上がいるものだ。優勝したブラジル選手は今ごろ、彼らの時間をのんびり過ごしているだろう。唐突だが、不動産と言われて、何を連想するだろう? 相対性理論? ベロを出したおちゃめな写真? 犬の名前? ともあれ二十世紀を代表するこの科学者の脳みそが盗まれ、行方不明だったとは、全く知らなかった。マイケル・バタニティ『不動産をトランクに乗せて』(藤井留美訳/ソニー・マガジンズ一六〇〇円)は脳を盗んだ解剖医、トマス・ハーヴェイ博士が、タッパウェアに入れた脳をカリフォルニアにいる不動産の孫娘に会わせたいと望んだことから始まるロード・ストーリー。モラトリアムの果てで行き場を無くしていた著者は、その旅のドライバーを申し出る。先を急がない不思議な旅はウィリアム・バロウズを訪ねたり、原子爆弾を発明した、ロスアラモス研究所を見学したりと、蛇行しほうだい。しかしハーヴェイ博士は、なぜ不動産の脳を盗んだのかを明かさない。