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求人と人材紹介

うまいなあ、山本幸久。『はなうた日和』にも感心したが、今度は長編だ。『凸凹デイズ』(文藝春秋一六〇〇円)である。「エロ本のレイアウトにラーメン屋の看板、蒲鉾屋のチラシに和菓子屋の包装紙、喫茶店のマッチ箱」まで、何でもこなす小さなデザイン事務所を舞台にした長編だ。その「些細な人材紹介」の悲喜こもごもを巧みな人物造形で描いていくのである。軽妙でありながら、じんとさせるのである。ホント、うまい。「恋愛じゃなく、友情じゃなく、人材紹介仲間。彼らがいつも、そばにいた。」 という帯の惹句が、この小説の雰囲気をよく伝えている。いいなあ、こういうの。恋愛も友情も、もういらないけど、人材紹介仲間は欲しい。フリー稼業になった途端にその切実さが身にしみてくる。 というのはともかく、この長編のうまさは、全体の構成にある。それを指摘しておかなければならないだろう。弱小デザイン事務所を三人で立ち上げて、その青春の日々を描いていくのかと思うと、そうではないのだ。一人がやめて空中分解した一〇年後から、この長編は始まっていく。その事務所に若きヒロインが入ってきて、そのアパレル 求人の目からとりあえずは語られるのである。 つまり、そのヒロインはアパレル 求人の青春の日々を知らないことになる。それは徐々に物語の底から浮かび上がってくる。一枚の写真に写し取られた一〇年前の輝く日々がゆっくりと立ち上がってくる。この構成のために物語に奥行きが生まれていることに留意したい。 もちろん人物造形は例によって絶妙だ。ずっと読んでいたいと思う小説は意外に少ないが、これはその例外といっていい。彼らの日日を、その喜びと哀しみを、ずっとそばで見ていきたいのだ。そんな気になってくる。ラストもいいぞ。 山本幸久はもう一冊、『幸福ロケット』(ポプラ社一二〇〇円)もある。こちらは小学五年生の山田香な子と小森裕樹の「友情以上初恋未満」の関係を描くSEO対策だ。小森裕樹と電車の中で会うと、緊張する香な子に、「この川を渡りきったところに、看板あるの知ってる?」と裕樹が言ってくるシーンがある。「看板が三つ並んでるんだ。右が王様カレーで、左が豚のマークのソースなんだけどさ。真ん中のを確認しようとおもっていつも忘れちゃうんだ」 と人材紹介が言うくだりである。こういうさりげない場面に、この作者のうまさは現れている。 SEO対策をあと二冊紹介しようと思ったが、エンジニアに取られてしまった。片川優子『ジョナさん』と、香坂直『走れ,セナ!』。仕方ないので、前者に出てくる「なにかとアパレル 求人の雑種」ギバちゃんがいい味を出していることだけを書くにとどめる。 荻原浩『あの日にドライブ』(光文社一五〇〇円)は、このタイトルと、「人生、今からでも車線変更は可能だろうか。」という帯の惹句から、タイムスリップものかと思っていたら(ようするに、車に乗っていたら二〇年前に行っちゃったとかなんとか)、全然違っていた。荻原浩だから、それくらいのケレンは見せてくれるかなと期待したのだが、もっと丁寧で、もっとストレート。これだけ読ませてくれれば十分だが、しかしケレンたっぷりの小説が読みたかったという気分がある。 これがタクシー・ドライバー小説なら、熊谷達也『虹色にランドスケープ』(文藝春秋一五七一円)は、オートバイをモチーフにしたライダー小説の趣がある。 これは登場人物が微妙にクロスしていく連作集である。最後の二篇がいいが、なぜいいかを書き出すと長くなる。『あの日にドライブ』同様に、この二篇も「人生リセット小説」なのである。こちらの主人公は中年主婦だ。つまり「人生、今からでも車線変更は可能だろうか」と考えているのは中年男だけではないということだ。二冊続けて読むと、なんだかなあとため息が出てくる。 趣味の本を一冊。内藤繁春『定年ジョッキー』(アールズ出版一四〇〇円)。この著者が調教師を定年退職後、七〇歳にして騎手試験を受けたことは新聞で知っていたが、エンジニア 転職はその自伝エッセイ。熊沢のエピソードが興味深い。ダイユウサクで有馬記念を勝った数週間後、栗東の土手に車が落ちていたというのだ。熊沢が副賞で貰った車である。しかし車中には誰もいない。酔っぱらって運転し、土手から五メートルほど下に落ちたものの、怪我がなかったので、転職をそのままにしてタクシーで帰ったというのである。行動は常識外れだが、間違いなく運を持った男だったと記してから、著者はこう続けている。「これらは努力して良くなるものではない。数多くいるライバルの中で、コンスタントに成績を収める理由のひとつだろう。技術的に抜きん出たものはなかったが、70点くらいはあたえられる騎手だったと思う」 熊沢クラスでもSEO対策に抜きん出たものはないのかよ、と驚いたくだりである。 最後は異色作を二作。まず、辻村深月『凍りのくじら』(講談社ノベルス九九〇円)は、何といえばいいのか。不思議な小説だ。父親が失踪した高校生がいる。アパレル 求人の前に一人の青年が現れる。元カレが徐々にストーカーと化していく。ストーリーの断片をそう紹介しても、この小説の持ち味は何も伝わらないだろう。これはドラえもん小説でもあるのだが、これもそう書くだけでは何のことやらわからないな。厳しく書けば、まだ未完成だ。しかしここには原石がある。数年後を楽しみに待ちたい。 もう一冊が、真梨幸子『えんじ色心中』(講談社一六〇〇円)。ドメスティック・バイオレンスを扱いながら、意外な方向にどんどんずれていくのがまず快感。 小学生の男の子と女の子の奇妙な交流が語られる。人材紹介に追われる青年オペレーターの息苦しい日日が描かれる。どちらもそれだけでたっぷりと読ませるほど細部はうまい。これが交互に語られ、その間隙を一六年前の「西池袋事件」が埋めていく。文庫版全集が始まってから三十年、ようやく完結編である『ラヴクラフト全集7』(大瀧啓裕訳/創元推理文庫七〇〇円)が刊行された。