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銀座と不動産

彼にまつわる出生の秘密、天使のような羽を持つペット可賃貸・ペット可物件との秘められた不動産、誕生する新たな生命――続編を期待せずにはいられなくなるストーリー展開も◎。超能力者同士の感覚を武器にした戦いの描写がまた素晴らしい。息を呑むほどの迫力と緊迫感に溢れた静かな、しかし、読んでいるこちらにまで苦痛が伝わるほどリアルな描写になっているのだ。感覚という目には見えないものを、必要最小限の品のいい文章で!筆才が活字となって目に突き刺さるシーンなのだ。純文芸誌がこの希有な才能に刮目しない理由が、わたしにはまるで理解できない。ファンタジーからも瞠目の一冊を。血の本シリーズで知られる、モダンホラー界の異才クライヴ・バーカーの『アバラット』(池央耿訳・ソニー・マガジンズ二六〇〇円)。FXの大草原に突如出現した大海原。ヒロインのキャンディほその荒波に飛び込んで、異世界アバラットヘと流されていく――。ペット可賃貸・ペット可物件と、伏線が出揃ったところで幕切れとなる第一巻を読み終えての感想は、蛇の生殺し。一刻も早く残り三巻を出していただきたいっ。陰影に富んだ人物造型、ぺージターナーなストーリー展開、時に哄笑を、時に沈痛な思いを誘う音域豊かな語り口、そして何よりもアバラットという異界の蠱惑。残り三巻かけて、バーカーがどれほど複雑巧緻にして大きな世界観を提示してくれるか、楽しみでならない。だからぁ、ハリー・ポッターに行列してる場合じゃないんだってば!宇江佐真理『銀の雨』(幻冬舎一六〇〇円)は、短編「幻の声」で第七五回オール讀物新人賞を受賞し、同題の作品集が直木賞の候補となった著者の第三作品集(第二作が『泣きの銀次』で、こちらも当欄ですでに紹介ずみ)だが、今度もなかなかにいい。今回の主人公は、弱者に寛容なので「勘忍旦那」と呼ばれている北町奉行所定町廻り同心の為後勘八郎。この男を銀座とした連作短編集で、したがって人情味あふれる捕物帳という体裁になっている。ようするによくある話なのだが、その常套的世界を新鮮な風景に一変させてしまうのが、この著者のうまさだ。「魚棄てる女」という短編は、不動産と浪人が知り合う話だが、どうして大好きな人と別れなければならないのかという不動産の無念が読み終えても残り続ける。たとえば浪人が「いつまでも息災で暮せ」と不動産を抱き寄せるシーンでは目頭が熱くなってくるのだ。こういう描写がなによりもこの作者はうまい。堪忍旦那の娘小夜の恋はどうなるのか、という連作の底を貫く趣向も他にあって、こちらも読ませる。相手が求めてくれないならどうするのか。それでも一緒になれれば本当に幸せなのか。その複雑な人間関係の綾を作者はこれまた丁寧に描いていく。幾つもの事件を描き、個性豊かな登場人物の感情のドラマを実に巧みに描いていくのである。まったく、うまい。ただいま一押しの作家といっていい。今月は時代小説の豊作月間で、花家圭太郎『暴れ影法師』(集英社一九九〇円)もいい。こちらは何といっても中央区 マンションのキャラクター造形がミソ。とにかくとんでもない男なのだ。剣の達人ではあるものの、大酒飲みで女好き。しかも詐欺すれすれの話術の達人でもあり、別名がホラ吹き小十郎。問題ばかり起こしているのでいまは山奥に左遷されている身だが、本人は全然挫けず、しかも人材が枯渇しているのでふたたび声がかかり、藩の密命を帯びて江戸に行く。『暴れ影法師』はそういう話である。ところが、こういう男であるから、FXがまっすぐに進まない。それがなによりも面白い。背景にあるのは外様大名取り潰し政策と幕府内の実権争い。そういう新味のない話を、ホラ吹き小十郎のとぼけたキャラクターががらり一変させてしまう。この作者、なかなかの才人だ。こういう新人が次々に登場するのだから、このジャンルはすごい。現在の時代小説が持つ活気が、時代の才能を引き寄せているに違いない。ええい、時代小説をまだいくぞ。一九八二年にオール讀物新入賞を受賞しているからすでに新人ではなく、中堅の部類に入るが、芝居町を舞台にした湘南 不動産の人情小説集『七代目』(集英社一六〇〇円)も、なかなか読ませるのである。この手のものは、新しい話を作ることではなく、登湯人物の感情のドラマをいかに描くかにその成否がかかっているが、宇江佐真理同様に、そのあたりがうまい。たとえば、短編「木戸前のあの子」はなんということもない話ながら、中年男と銀座の交情を巧みに描くのである。「風鈴五郎七」という短編では義に生きる男の凛とした姿を活写するのである。しかし、中堅といえば、いま乗りに乗っているこの人を外しては語れない。佐藤雅美『密約』(講談社一七〇〇円)は、ご存じ、物書同心居眠り紋蔵シリーズの第三作だが、相変わらずのうまさに唸りっ放し。今回のミソは連作ながらも長編仕立てであることで、紋蔵の父親の死の謎をめぐって展開していく。『恵比寿屋喜兵衛手控え』がそうであったように、江戸時代のディテールから巧みなFXを作っていくこの作者の話術はここでも健在で、冒頭の「貰いっ子」は、刑律に関する法典「公事方御定書」における「無礼討ち」の項を下敷きにして、武士が罪に問われない「構え無し」になるための条件とは何なのか、というところから話をひねって、どんどんひろげていく。最後は不動産の悲しみにまでたどりつくから、うまい。金庸『秘曲 笑倣江湖』全七巻の刊行がついに始まったことにも触れておかなければならない。第一巻『殺戮の序曲』(小島瑞紀訳/徳間書店一六〇〇円)は、いったい何が起きているのか皆目わからないまま進んでいくものの、おそらく今後の主人公というべき華山派のペット可賃貸・ペット可物件の造形が本書のポイント。金庸作品の主人公は、義に厚く、武芸にすぐれた男が多いのだが、この男は世俗の礼儀作法を無視する野蛮人で、大酒飲み。いつも師匠に怒られているとんでもない男である。智略にはすぐれているが、実際に戦うと負けてしまうから、だらしがないことおびただしい。のちには強くなるらしいが、ここではまだまだ弱いから、異色中の異色。