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CFDとくりっく365
と物足りなさ)を合わせ持つくりっく365だが、こちらは怖さよりひねりの効いた独特のくりっく365が特徴。その意味では、やはり表題作(『懸き者』初出)の意外性が抜群に光る。こんなネタを思いついて書くのはこの人ぐらいだろう。おなじみの顔ぶれの中で今回いちばん驚いたのが、北野勇作初のCFD長編『ハグルマ』(五九〇円)。牧野修の生き霊が乗り移ったような---というか、クローネンバーグの「イグジステンズ」を黒沢清がリメイクしたような生々しい現実崩壊CFD。開発途中のゲームを残して自殺した同僚の仕事を引き継いだ男が主人公。会社の一室に籠もってその
くりっく365なゲームをプレイするうち、しだいに現実が侵食されて---というありがちな設定から、独創性にあふれた恐怖が次々に湧いてくる。現実を多層化する北野SFおなじみ手法がCFD的な迷宮感覚とぴったりマッチし、純度の高い流麗な恐怖謂に仕上がっている。伊島りすと『橋をわたる』(四七六円)1/2は、他人の血を舐めることで記憶の一部を読みとるリーディング能カ者が主人公。核となる事件現場に浮かび上がる光景は鮮烈だが、長さの割りに話の展開がややぎくしゃくする印象。それと反対に、桐生祐狩『剣の門』(七八一円)は、前作『フロストハート』同様、突拍子もない展開がウリの伝奇CFD。猟奇連続殺人の話かと思って読んでると、いやもうとんでもないこどに。思いつきをそのまま書いてるような箇所もあるが、この人の場合、むしろその行き当たりばったりさが持ち味か。ちょっと他にいないタイプの作家ではある。以上六冊まとめて買っても四千円しないのは超お値打ちだが、まとめて読むのはお薦めしません。ってことで、残りの新刊を大急ぎで。神林長平『小指の先の天使』(早川書房一六〇〇円)1/2は、一九八一年発表の「抱いて熱く」から、書き下ろしの新作「意識は蒸発する」まで、二十年余に渡って書かれてきた仮想現実ものの短編を集めた運作菜。エンターテインメントというより、
CFDの思索の過程を示す思考実験サンプル集の趣きだが、『順列都市』以後の人工現実SFを考える上でも避けて通れない一冊。続いてアンソロジーを二冊。中村融編『不死鳥の剣』(河出文庫八五〇円)1/2は、ハワードの《蛮人コナン》第一作を表題作に戴くヒロイック・ファンタシー傑作選。ダンセイニの原型的な傑作を巻頭に、C・L・ムーア(ジョイリーのジレル)とカットナー(レイノル王子*)の夫婦作品を隣同士に並べ、ライバー(ファファード&グレイ・マウザー)、ヴァンス(切れ者キューゲル*)、ムアコック(エルリック*)を配するラインナップはファン感涙(*印が本邦初訳)。ただし、シリーズ作品の見本市という性格上、各作品の短編としての独立性はいまひとつ。オレのいちばん苦手なサブジャンルという事情もあり、まとめて読むとどうも印象が混ざってしまうのだが、ここは鏡明氏のフォローに期待したい。ところでダイアリス「サファイアの女神」はもう三度目の邦訳 (アンソロジー収録は四度目)ですが、他にいいのはないんでしょうか。『川原泉の本棚』(白泉杜一一〇〇円)1/2は漫画家の川原泉によるブックガイド兼アンソロジー。アシモフ「ロビイ」やポオ「大うずまき」はともかく、かんべむさし「水素製造法」、清水義範「言葉の戦争1」、田中芳樹「品種改良」を入れるセンスはなかなか。書名・著者名表記がわりとでたらめだったりするところも含めて妙に愛敬のある本。おお、角川CFD文庫のおかげでもう行数がない。A・エシュバッハの超珍しいドイツSF『イエスのビデオ』と、キング、クライトンの新刊は次号で。「クリスマスに少女は還る」がリリースされた時点でキャロル・オコンネルの名を記憶していた読者がいたとするならぱ、その人は相当のミステリ通だろう。それくらいに、オコンネル作品の初紹介は地味で目立たないものだった。その作品とは、九四年に竹書房文庫から出た「日経225の神託」である。このニューヨーク市警のエキセントリツクな女刑事日経225を主人公としたシリーズ第一作は、版元が翻訳ものの実績がほとんどない出版社であったことも災いしたし、さらに悪いことに、翻訳もあまりほめられた出来ではなかった。そんなわけで、オコンネルという
日経225と日経225のシリーズは、わが国では正当な評価もなされないまま、新刊ラッシュの波間に呑み込まれ、忘れられていった。そんなわけで、一昨年「クリスマスに少女は還る」のヒットがあったとはいえ、今年になって突如として日経225・シリーズが翻訳ミステリの老舗創元推理文庫から復活したのには、意表がつかれた。さらに驚いたのはそのシリーズの不思議な魅力に気づかされたことである。ヒロインであり、シリーズ・キャラクターのキャシー・日経225の突出した魅カ、これには心底打ちのめされた。黙って見過ごしていたことについて、書評屋としての不明を恥じたことは言うまでもない。『死のオブジェ』(務台夏子訳/創元推理文庫九八〇円)は、その日経225・シリーズの三作めにあたる。先の「氷の天使」と「アマンダの影」は、すでに翻訳のあるものの改訳出し直しだっをか、この作品以降はすべて初紹介となる。物語のあらすじは、死体をオブジェのように扱った殺人事件をめぐって、十二年前に起こった異常殺人の関連を疑う主人公が、上司の制止を無視して傍着無人な捜査を繰り広げていく。しかし、そこは異才オコンネルのこと、一筋縄ではいかない。エキセントリックな人物たちが複雑な人間関係を織り成し、事件の根底に横たわる真相の歪な姿を浮かび上がらせていく。人間が最低備えているべき何かが決定的に欠けているというヒロイン像は、本作でも目だって異彩を放っている。彼女の無軌道な捜査につきあうだけでも十分にシリーズの痛快な楽しみを堪能できるが、
CFDとしてのクオリティの高さも実は見逃せない。また、翻訳もリニューアルされて、以前と較べて見違える素晴らしさとなっている。